DEPTH
ちょっと軽めに、ちょっとマイナーな、好きなゲームの話。
ファミ通のクロスレビュー。
あれ、今となっては嘲笑の対象でしかありませんが、
ネットのない時代には大変貴重なゲームの情報源でした。
レビュアーには個性的な編集者が揃っていましたね。
マリオ64に一人だけ9点をつけて初の40点満点を防いだ忍者増田はもはや伝説。
個人的に好きだったのは、基本的に辛口。
でもなんかマニアックなゲームにやたら食らいつく変人。
そんな印象のローリング内沢。
そんな彼が絶賛しているところから興味を惹かれたのが今作。
懐かしき初代プレイステーションのゲームです。
ゲームかな?
平たく言えば短いフレーズの音色をただ好きに選んで組み合わせるだけで、
テクノとかアンビエントとかのそれっぽい電子音楽が作れます。
この「それっぽい」っていうのが大事。
音楽の知識なんていりません。
シンセサイザーなんて普通は知らなくて当たり前。
それでも誰だって簡単に「それっぽい」音楽が作れちゃうところがすごく楽しい。
テーマに沿った数種類のステージがあり、
曲を作ったあとはイルカとなって泳ぎながら自作の曲に浸れます。
こんな昔のマイナーなゲームをなぜ今頃紹介するのか、と言いますと。
今の時代のゲーム環境にすごく合ってるゲームなんですよこれ。
今はゲーム中のスクリーンショットの撮影や、
映像の録画なんかをそれこそワンタッチで取得できますよね。
しかもダイレクトにネット上にアップロードすることだって可能。
もし当時からこのDEPTHにその機能が備わっていたら。
あるいは今の時代にDEPTHが出たら。
誰でも音楽が作れる気軽さと、それらをシェアする楽しさが絡まり合って、
規模は小さくともネット上ではきっと楽しく盛り上がったことでしょう。
「出るのが早すぎた名作」なんて言葉がありますけれども、
私がこの言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのがこのDEPTHなんです。
せめてこんなゲームが出てたんだよ、ということだけでも広めたい。
最後にこのDEPTHにまつわる思い出を語って締めたいと思います。
私の学生時代、川井君という友人がおりました。
彼は品行方正でとても真面目な人物でした。
ガリ勉というほどではありませんが、学級委員長が似合うタイプ。
そんな彼にこのDEPTHを遊ばせてみたことがあります。
「ただ感覚で音楽を組み立てていけばいいから」
そして仕上がった音楽。
私はあれを一生忘れることはないでしょう。
しかし言葉で表現することは大変難しいのです。
イメージとして近い物は地獄絵図を電子音に仕立てたもの。
狙って作ってもこうはならないだろう、という多重不協和音。
数秒聴くだけでを平静を失い、不安に心を支配される、そんな曲でした。
なぜ品行方正で通っている彼からあんなものが生み出されたのか。
未だに謎というか、掘り下げてはいけないものを感じたので不明のまま、
この地獄の底から轟く電子音楽は私の目の前で削除されてしまいました。
でも今のゲーム環境なら何らかの形で世に残すことが出来たかも知れない。
つくづく惜しい、出るのが早すぎたゲーム。
それがこのDEPTHなのです。
ちなみに出るのが早すぎたとしても、遊び始めるのには決して遅くありません。
なぜならゲームアーカイブスのラインナップにあるからです。
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP9000-NPJI00023_00-0000000000000001
YOUTUBEで見かけた動画も参考までに。