ぶっつけ本番アウトワード その3
集落を出て海岸を散歩中、
謎の巨大生物にビリビリ玉をぶつけられる。
聞いてない。
あれが虫だか海老だか知らんが、
ドラゴンボールのエネルギー弾を
発射してくるなんて聞いてない。
ク、クソッ!
楽しい旅立ちを台なしにしやがって!
覚えてろよ!
泣きながら海岸を猛ダッシュして逃げた。
あとから知ったけど、あいつ「シャコ」らしい。
でか過ぎだろ!
飛び道具を放つ凶悪な巨大シャコを
最初の集落から徒歩20秒のところに配置すんなや!
海の向こう側になんか見える!
港湾都市かな?
軍港かな?
しかし道は途切れていました。
海沿いに進もうと思ってたけどここまでか。
諦めて草原地帯を進む。
早速強そうな黒チョコボを発見。
絡まれないように距離をとって通過します。
謎のダンジョンを発見。
でも今回はさすがにスルー。
石像が怖すぎます。
この石像といい、巨大な海の生き物といい、
クトゥルフ神話がモチーフなんでしょうか。
海外の人ってやたら好きだよね、あれ。
む、以前見かけたヤバそうな山が。
見てくださいよ、紫ですよ?
紫の山とか絶対にヤバい。
紫色に染まるフィールド=強毒&呪いのエリア。
対策を講じなければ足を踏み入れた途端に死。
そんな凶悪な終盤ゾーンを想像していたんですが、
特に何の悪影響もなく拍子抜け。
なんか普通に橋とかかかってるし。
実はこの世界の観光地かな?
信仰の対象になってたりしそう。
物見遊山の旅にはちょうどいいですね。
登ってみるとしましょうか。
山の斜面になんか謎の入口があった。
・・・ここヤバいのでは?
絶対ヤバいのでは?
ラスダンなのでは?
ああ、これ絶対巨大トロールとか
ドラゴンゾンビとか徘徊してるやつ。
と思ったら普通に会話できる人いた。
ここは魔法習得のための修行場らしい。
紛らわしいわ!
なんか回収された死体とか転がってる・・・
難易度的にはハンター試験レベルのやつかな・・・
いいですか、みなさん。
魔法なんて実在しません。
そんなもの社会の落伍者の妄言に過ぎません。
さっきの連中もただの怪しい宗教団体です。
関わっちゃダメなやつ。
人間は健康な体さえあれば、
他に何もいらないんです。
さあ、元気に山登りを再開しましょう!
分かれ道を左に行ってみます。
下りになってるけど、こっちなんかありそう。
おや、また謎の入口だ。
またしても怪しい宗教団体でしょうか。
でもさっきのとはエリア名が違う。
あ、わかったぞ。
さっきのが魔法の修練所だったんだから、
こっちは物理攻撃のエキスパート養成所ですよ。
きっとそうに違いない。
うむ、それなら肉体派の私に相応しい。
入門してみましょう。
内弟子になれば寝床ぐらい用意してくれるかも。
頼もう!
お、さっきとは違って広々清潔な感じ。
前方にいるのは受付の人かな。
と思ったら敵だよ。
ロックオン反応しちゃったよ。
これはあれだろうな。
入門したければ力を示せ!系のやつ。
しかもこいつ見てよ。
ローブ姿だよ?
ただの布だぜ?
こん棒で優しく撫でたらすぐ泣き出すぜ?
先手必勝だオラッ!
いい声で鳴けや!
がああああああああ!
何しやがった!
目の前で氷が弾けたぞ!
てめえさっきの魔法宗教団体の人間だろ!
こっちの入門者を襲って妨害してんだな!
くだらねえ真似しやがって!
ホグワーツ許さん!
ぎええええええええええええ!
このガリ勉、何気に鉄のメイス装備。
殴られるとかなり痛い。
防具がただのローブだけに、
こちらの棍棒攻撃も効いてはいるが・・・
鈍器による泥臭い格闘の応酬。
お互い残り体力はギリギリ。
次の一撃で勝敗が決するッ!
うおおおおおおお!
コキャッ
あっ・・・
顎先を撫でられ昏倒。
集落を旅立ち、初めての死を迎えました・・・
このゲームにおける死=気絶・失神であって、
いわゆるゲームオーバーというものはなく、
様々な流れに沿って冒険人生が続いていくらしい。
今回のパターンを要約すると、
とどめを刺されることなく放置されたので、
入口まで這って逃げ、そこでまた気絶したそうな。
ムクッ
確かに入口だな。
む、ご丁寧に包帯が落ちている。
あのホグワーツがくれたのか?
荷物も盗られず、傍らに置かれていた。
なんて優しさに満ち溢れた世界なんだ。
これがディアブロだったら、
所持品どころか耳まで削ぎ落されていただろう。
包帯を用いて応急処置を済ませ、
飯を食らい、皮袋から水を呷り、
ようやく人心地がついた。
やれやれ、命拾いしたなあ。
危ないことはするもんじゃないね。
おとなしく集落へ戻る・・・
訳ねえだろうが!
ふざけんなオラー!
俺は見たぞ!
お前の体力が未だ減ったままなのをな!
飛んでくる氷塊を華麗に回避。
無駄だ、貴様の氷魔法は見切った。
これがフィジカルエリートの力。
瞬時に懐に入り込む。
既にこん棒の必殺の間合い。
往生せえや!
バーン!
再び炸裂する氷の爆発魔法。
しかし!
寒くねえし!
裸だけど全然寒くねえし!
気にしねえし!
死ねえ!
強かったぜ、おまえ・・・
だが最後は強靭な肉体を持つ者が勝つんだ。
生まれ変わったら書物を捨てて肉を喰いな。
無事に決闘に勝利しましたが、
なんか体から白い冷気が出てるんですよね。
凍結デバフとかそういう?
これほっとくと凍死しちゃうやつでは?
慌てて焚き火をセット。
その脇に寝袋を敷きました。
雪山でもないのに凍死は嫌だ。
体力もヤバめです、休息をとりましょう。
フゥー、これで疲労凍死せずに済みそう・・・
そこに表示されるエラーメッセージ。
休息不能:暑さから意識不明になります
んもう!なんなんだよ!
何をさせたいんだよこのゲームは!
せっかく熾した火を消し、ふて寝。
だそうです。
あの冷気モクモクはなんだったの?
魔法教団の妨害工作を退けた私。
いざ肉体派組織へ入信!
縦穴にはロープが一本垂らされており、
それを使って下に降りるようです。
うーん、エントリー方法も肉体派だぜ!
気に入った!
・・・・・・
なんか赤と緑に光る奴らがウゴウゴしてて、
こっちに駆け寄ってきたから急いで引き返した。
魔法派も肉体派も関係ねえ。
怪しい宗教は全部ろくでもねえわ。
やめやめ、帰ろう。
登山を再開。
眺めはこんな感じです。
なんかいろいろ建造物が確認できますね。
ハァハァ、もうちょっと・・・
やった、頂上だ!
頂上だけど特に何も・・・
おや、左の岩のところに剣が刺さってますね。
これはもしかして・・・
伝説の勇者にしか抜けない系の剣・・・?
待たせたな、伝説の剣よ。
勇者ならここにいるぞ!
岩に擬態していた巨大蜘蛛がドーン!
ちょっとやめようって!
こういうのさあ!
クソッ、これも伝説の剣入手の試練ってか。
RPGあるあるだわな。
いいぜ、見せてやるよ!
アウトワードの天才の戦術をな!
外周を走りまわり、敵を振り回したあと、
剣に向かって猛ダッシュ。
獲り逃げダイナミック!
バーカ!
メシウマだぜ!
ハーッハッハッハ!
やりましたよ、皆さん。
故郷の村を旅立って苦節1時間。
ついに伝説の剣を手に入れましたよ。
今は錆びてるけど、特殊な方法で鍛え直すと
最強の剣に生まれ変わるんですよね。
RPGの定番ですよ定番。
「王にふさわしい剣を作れと司令官に言われた」
というフレーバーテキストもいいですね。
この文面をね、
そのまま受け取ったら素人ですよ。
伝説の剣を抜けなかった凡夫が、
貶めるために剣に嘘を刻み込んだんですわ。
これは伝説の邪聖剣ネクロマンサーです。
私だからこそ岩から抜けたんです。
伝説の剣を手にした私は、
名実ともにオーライ最強となりました。
そんな最強の私の、最強の勘が言っている。
この崖下が最強に怪しいと。
ほーら、やっぱり死体があった。
死体という名の宝箱がね。
でもどうやってあそこまで降りるんだろう。
この崖、滑り降りられるのかな・・・?
ズザザザザ
お、いけたいけた!
転落死したのか、アホだなあ・・・
君なあ、落ちて死ぬって・・・
ほんとに君なあ・・・
うーん、大したものはなさそう。
期待外れだったぜ・・・
さて問題はここからどう帰るかだ。
とりあえずあの出っ張りまで滑り下りるか。
ズザザザ・・・
バインッ!
えっ・・・!?
なんで弾け飛んだ!?
あっあっ・・・
あっあっあっ・・・
ザンッ!
ここで必殺の
五点着地ッ!
できる訳もなく、必然の死を迎える。
なんだこのアクロバティック絶命ポーズ。
どうやらさっきの魔法宗教団体の人間に
助けてもらったようですね。
表示されてるグラフィックは不気味な亡霊ですが・・・
ムクッ
転落しようと、気絶しようと、
伝説の剣が手から離れることはなかった。
これは勇者の証明。
荷物、またしても盗まれず。
焚き火まで用意してくれている。
ホグワーツの優しさが沁みた。
ううむ、悪い連中ではないのかな。
そのうち魔法を習いにいってみようか。
そんなことを考えながら就寝。
山の頂上で伝説の剣を入手するという、
颯爽と下山しました。
次の目的地はここ。
山の上から見かけて気になっていたんですよ。
そして実は食料や水も尽きていて大ピンチ。
早めに補給せねば干上がってしまいます。
と、そこで重装備の戦士と鉢合わせしてしまいました。
おいおい、フルプレートじゃねーか・・・
めっちゃ強そう・・・
しかもなんだあのトゲトゲ付きの棒・・・
フルプレートを見たら逃げろ。
戦うなら不意打ちか、寝込みを襲え。
それがキングダムカムを遊ぶ内、
私の心に刻み込まれた生き残る知恵です。
やめて!
私のお尻をその棒でグリグリする気でしょう!
エロ同人みたいに!
私は猛然と逃げ出しました。
ソウルシリーズみたいなガチ装備しやがって!
クソッ、俺だってその装備欲しい!
さすがに敵は重装備だけに、逃げるだけなら容易です。
容易なんですけれども。
つかず離れず、私はこの地点まで敵を誘導してきました。
青い要塞前の浜辺です。
なぜかって?
そう、ここにもヤツがいるんです。
「マーズ・ランキング」8位
鬼塚慶次(シャコ)が。
これは完全な賭けでした。
今の状態でシャコと接触したならば、
シャコはどちらを先に狙うのか。
今まさに発射されんとしている
あのビリビリ玉がこちらに飛んで来たら、
私はソウル戦士とシャコの二人に
よってたかって激しく凌辱されるでしょう。
エロ同人みたいに!
さあ、どっちだ。
左(私)と右(ソウル戦士)どっちに飛ぶ。
右だァーッ!
ビリビリ玉が見事ソウル戦士に命中。
ソウル戦士が一瞬怯んだ隙に・・・
カサカサカサカサ!
一気に間合いを詰めていくシャコ。
ついに始まったシャコVSソウル戦士。
火蓋が切って落とされました。
特等席で観戦。
見たことある。
この絵面、テラフォーマーズで見たことある。
ソウル戦士が精神注入棒を振りかぶると、
華麗なスウェーで横に回り込む鬼塚慶次!
かわして水月、かわして肝臓。
見事なアウトボクサー戦法で魅せる。
再びビリビリしているソウル戦士。
うーむ、シャコ優勢か?
この時、私は迷ってました。
ソウル戦士の装備が欲しい訳で、
それならシャコと一緒に戦うべきだろうか、と。
でも間違ってシャコを殴って怒らせたり、
何より巻き込まれたらこっちが死んじゃう。
悩んでいる間になんとシャコが瀕死に!
どうやらあの精神注入棒の攻撃力ハンパないみたい。
クソッ、加勢が遅れたか!
よくも慶次を!
シャコに気を取られている内に近寄り、
背中を何度か斬りつけました。
が、倒しきれず。
ブーン!
あぶねっ!
紫色のエフェクトが走っている。
シャコの攻撃による何らかのデバフか。
徐々に体力が減少する系なら万々歳だな。
少し時間を稼いでみるか。
あんよがおじょうず!
ヨチヨチヨチ!
ズドドドドドド!
ウ、ウワー!
そんなに怒るなよ!
本気で猛ダッシュしてくるなって!
うーむ、敵も満身創痍ではあるが
ゴリ押しで押し切れるほど瀕死でもないか。
あの紫デバフも体力減少系ではないらしい。
勝手に死んでくれたら楽だったんだが。
うーん、どうしたもんかな。
ん?
よし、行け白チョコボ!
君に決めた!
クエー!
よっしゃ!挟め挟め!
合わせろや白馬鳥ッ!
1:自分が囮になり、空振りを誘う。
2:チョコボがくちばしで敵のアナルを責める
3:悶絶してるところを棍棒でしばく
すかさずローリング回避してオフェンススイッチ!
今度はくちばしが金的に炸裂!
即席とは思えぬ完璧なコンビネーションアーツ。
黄金の国イーラのバトル曲が再生されても不思議じゃない。
前後を責められて怒り狂い、
今度はチョコボを狙い始めたのなら
後頭部に遠慮なくフルスイングである。
どうした!
もう終わりかおい!
クマン人の方が100倍強えぞ!
だがここで誤算が生じた。
敵は後頭部を殴られながらも、
そのままチョコボへの狙いを外さなかったのだ。
白チョコボの体から鮮血が飛ぶ
うわああああああ!!
チョコボーーーー!!!
チョコボはギリギリ生き残った。
だが相棒を傷つけられたのだ。
私の怒りは有頂天に達した。
こうなっては作戦も駆け引きもない。
どちらかが倒れるまで、
真っ向からの殴り合いだ。
やはり精神注入棒の攻撃は痛い。
一撃でごっそり持っていかれた。
だが止まらない。
私の血潮はもう止められない。
シャコ!
チョコボ!
見ててくれよ!
これが絆の力だー!
ドサッ・・・
フゥー
これをチョコボと決めたかったんですけど、
瀕死になって戦意喪失したのかどっか行っちゃいました。
これで頭の固い読者諸兄も
お分かりになったことでしょう。
私がアウトワードの天才だということがね。
※右の斜面にいる白いのが逃げ出した鳥
かーっ!
自分マジ最強過ぎる!
っていうか天才過ぎるマジで!
かーっ!
しかし天才にもひと時の休息は必要。
砦に入ってみましょう。
額縁の位置直そうや。
天才を迎える環境じゃないですよ。
あ、そう。
歓待せずに門前払いしちゃう系なんだ。
選んじゃうよ。
この二つ目の選択肢選んじゃうよ。
どこぞに話の分かる責任者はおらんかなと探すと、
「ここで休んでいくといい!面倒を見るよ!」
いたよ。
人間出来てる人がいましたよ。
あったけえよ。
死んでもとどめは刺されないし、
包帯と焚き火で介抱してくれるしさあ、
アウトワードの世界、マジあったけえ。
ん?
ん?
「働けクソ奴隷!鉄を掘り出してもってこい!」
ん?