老害のくどい話、アイルランドあれこれ

私、テレビゲームと共に生きて参りました。

もういい歳なのに未だにやめられません。

 

そんな風ですから、

好きな音楽ジャンルは?と問われれば、

迷うことなく

 

「ゲーム音楽!」

 

と答えます。

いえ本当は答えませんよ。

一般の方からは変な目で見られますものね。

 

ですので、

 

ジャズとか民族音楽とか楽器メインが好きなんですよね^^

まあ語れるほど詳しくないですけどね^^

 

みたいなお茶の濁し方だけは上達しました。

 

嘘はついてはおりません。 

ゲームに限らず、劇半、サントラといった類、

または楽器だけの音楽が大好きなんです。

 

で、好きなゲームミュージックはこれ!

みたいな記事ならそりゃもういくらだって書けてしまうんですが、

今回はゲーム好きの人がすんなり気に入りやすい

ある音楽ジャンルについて紹介します。

 

それはアイルランドの伝統音楽です。

 

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イギリスの西にある北海道ぐらいの大きさの島で、

その島の北半分はイギリスで、南半分がアイルランド共和国。

 

昔は独立を巡って爆弾テロが盛んな国でした。

宗教もカトリックとプロテスタントで分かれてたり、

色々と難しい歴史を持った国です。

 

ファイナルファンタジーシリーズの音楽で有名な

植松伸夫さんがアイルランドの伝統音楽のファンということで、

初めて聞いた場合でも「あ、なんか聴き覚えあるような」と、

気づかぬ内にちらりと触れてきた方も多いかも知れませんね。

 


16-Harvest-FFV OSV

 


Final Fantasy IV Celtic Moon - Prologue

 

映画タイタニックの下層民のダンスパーティなんかも有名。

ゲームに詳しくない人に説明する時はこちらが便利。

 


Titanic - Jack and Rose Dancing

 

とは言うものの。

私がアイルランドの音楽を始めとする文化に

ハマったきっかけはゲームでも映画でもありませんでした。

 

当時、お酒に関係する夜の仕事に従事していたのですが、

その頃は勉強の為にひたすら本を読んでは知識を貪っていました。

そんな中で出会った一冊がこれ。

 

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もし僕らのことばがウイスキーであったなら

厳密には勉強目的からはちょっと外れていますが、

有名な村上春樹の紀行エッセイ本です。

 

スコットランドとアイルランドのウィスキー蒸留所を訪ねる

みたいな内容の本だったのですが、これにやられました。

写真で見るアイルランドの景色があまりにも美しかったのです。

 

やだ・・・

超きれい・・・

行ってみたい・・・

 

アイルランドという国自体がですね、

諸説ありますが、ウィスキー発祥の地とも呼ばれてまして。

そこに実際に行ってみるのも勉強になるのではないかな!なんて、

それっぽい理由をあとから加えていったんですけども、

まあ実際は風景が綺麗だから行ってみたくなったっていうね、

そんなもんですよね、旅のきっかけなんて。

 

どんどん話がずれてますね。

音楽の話が旅の話になってます。

でもいいんです。

老害っていうのはそもそも自分の話しかしませんし、

長い話を何度も繰り返して若い人を辟易させるものなので。

 

その頃は海外なんて行ったこともありませんでした。

英語だって喋れませんし、今考えるとまあ無謀なこと。

 

そんなアイルランド旅行が夢の一つとなって、

旅に出る前に歴史や文化を知ろうとする中で、

私はアイルランドの音楽と出会いました。

 

正確に言うと、アイルランドの有名な黒ビールであるギネス。

それも缶や瓶ではない、生ビールを飲む為に

品川は大崎にある有名なアイリッシュパブに行った際、

愛好家たちによる音楽セッションを耳にしたんです。

 


Irish Music Session at Shamrock bar,Japan 2012

 

こんな雰囲気。

行けばいつでも聴けるとは限らないんですが、

その分、ミュージックチャージなんかもいらないんですよ。

 

あ、いい!

 

と思いました。

これは我ながらひどいと思うんですけど、

 

ゲームっぽくていい!たまらん!

 

なんて。

 

そこからはさらにアイルランド音楽に関する本を読み漁り。

 

作曲理論なんて小難しい知識はないので説明が雑ですが、

なんでも日本人がグッとくる音楽の作り方と、

アイルランドの音楽の作り方ってそっくりなんだそうな。

 

夕焼け小焼けの赤とんぼとか、男はつらいよのテーマ曲とか、

その辺のメロディーの組み立て方と近い物があるそうです。

 

そんな訳であらゆる本を読んで音楽を聴いて酒を飲んで。

ここまでくるともう想いは止まりませんでした。

恋でしたね、あれは。

 

もう20年近く前のことですが、当時はユーロが高い高い。

ネットはあれども、今より通販が充実してない時代です。

音楽配信サービスなんて影も形もありません。

 

慕情を満たすにはもう行くしかない。

航空券が比較的安くなる真冬の2月。

オープンチケットを買って旅立ちました。

 

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現地でしか手に入らないローカルなCDを買いまくり、

観光土産とは一線を画す逸品を求めて

音楽の街と言われるエニスの楽器屋に足を運んで

なんかテーブルの下で埃被ってた無骨な羊の皮の太鼓を買ったりしていたら、

旅の資金50万円が僅か一か月で吹っ飛びました。

 

安宿に泊まり、食事もできるだけ質素にして、

夜だけは音楽を聴きにパブに出掛けはしたものの、

そこそこ節約していたつもりだったんですけどね。

 

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お土産で売ってるこういうのじゃなくて・・・

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こういうちゃんとしたのが欲しかった

 

他にも1か月ずっと洋食を続けていたら体と心が悲鳴を上げ始め、

たまたま南部のクロナキルティという街で泊まったホステルの

宿泊客の共有冷蔵庫の中に残されていた、誰かが忘れていったであろう

 

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その名もブルードラゴンソイソース

 

を見つけ、

 

あれ、なんかあの瓶の形見たことある・・・

醤油・・・? え、これ醤油・・・!?

 

とまるでレアアイテムがドロップした瞬間のような興奮を見せ、

茹でたじゃがいもにその醤油をぶっかけてそのまま齧ったら

それがまあ、うまいことうまいこと。

心に沁み渡りました。

 

これで日本まで生きて帰れるだけの気力を取り戻したぞ!

と思ったんですが、醤油だけでは足りなかったのでしょうか。

なんと一日二日で元に戻ってしまいました。

 

最後の切り札として帰国直前に首都ダブリンに戻り、

「YAMAMORI」という名のなんとも怪しい

日本料理の店に駆け込んで親子丼を食べました。

 

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この緑のボードにOYAKODONって書いてあった

 

(試しに検索したらまだ営業してて驚く)

yamamori.ie

 

卵は完全に火が通っていてガチガチ。

鶏肉はパサパサ通り越してガチガチ。

ご飯はインディカ米で炊き方が悪いのかガチガチ。

 

卵は生食が危険だからしっかり火を通していたんだろうけど、

なんでこんなに全部硬く仕上げてくるんだ、と不思議でした。

 

しかし一か月ぶりに食べる醤油と、お出汁の組み合わせ。

日本人ならみんな大好きなあの味。

 

この親子丼もとい、OYAKODONを口にした瞬間、

両頬の筋肉がギュッ!と締まりました。

いでででで!となるぐらい強く。

 

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信じられないでしょう。

私もあんな体験をしたのはこの一度きりです。

食べ物にも禁断症状があって体が反応した、ということでしょうか。

 

頬の強張りが収まったあと、改めて食べた

そのガチガチの親子丼は得も言われぬ旨さでありました。

 

そうか、日本人はやはり出汁と醤油なんだ。

めんつゆなんだ。

 

そう理解した瞬間、私は日本人であるという

強烈なアイデンティティに目覚めたのです。

 

自分探し?

バカじゃねーの、ただ楽しむために行くんだよ旅行なんて!

そう思っていました。

 

しかしそうじゃなかった。

めんつゆです。

めんつゆによって心の在り方が変わりました。

 

ちゃんと働いてきっちり税金払うぜ!

そんな気持ちになったのです。

日本にいたままでは至れなかった心境です。

 

さあ、日本に帰ろう!

親子丼パワーによってすっかり元気を取り戻した私は、

巨大なバックパックに詰め込んだ大量のCDと太鼓と笛、

それからいっぱいのお土産品を持って帰路に付きました。

心にめんつゆを宿して。

 

ええと。

何でしたっけ。

そう、音楽の話でした。

 

それもゲーム好きの人に受けそうなアイルランド音楽って

テーマで書こうと思ったのにめっちゃ親子丼の話してましたね。

 

他にも相部屋になった自称流浪のミュージシャン、

ヒゲもじゃロシア人のセルゲイさんに夜中突然叩き起こされて

ギター片手に「お前のために歌うぜ!」とか言われ、

深夜のジャイアンリサイタルが始まったと思ったら

飛び起きてきた宿の主人になぜか私まで一緒に怒られたりとか

旅の思い出もいっぱいあるんですけど、とりあえず音楽の話に戻します。

 

これです。

有名美人ボタンアコーディンおばちゃんこと、

シャロン・シャノンのCavan Potholes・・・なんですが、

 


Cavan Potholes

 

正確にはドーナル・ラニーという名物プロデューサーの

ベストアルバム「Journey」に収録されているバージョンの方です。

私はこっちをイチオシしてるんですが、YOUTUBEにありませんでした。

ちょっとアレンジが違うんですが、旅情感が強くてよりグッとくるんです。

 

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The Best Of Donal Lunny - Journey

 

もう一つも有名な人だけども、よりローカルな味わい。

 


The Morning Star/The Caoilte Mountains

 

マーティン・ヘイズのThe Morning Starです。

昔から演奏されている現地の定番曲の一つではあるんですが、

この人が演奏するとなんでこんなに切なくなるのか。

聴く度にああ、もうたまらん!という気分になります。

 

どうでしょう。

ゲーム、それもファンタジー物の作品なんかをよく遊ぶ人なら、

どちらもすんなり気に入ってしまうのではないでしょうか。

 

今はYOUTUBEで漁れば色々と聴けます。

著作権的にはちょっとアレかも知れませんが、

出会いがそんな風でも、きちんとファンになって、

以後ちゃんとお金を出して買うようになれば、

それは良いことなのではないでしょうか。

 

私自身もそのパターン多いんですよ。

見たこともないドラマのサントラとか買っちゃうの。

 

さて。

この二曲を聴き比べてみると随分毛色が違うとお感じかと思います。

だってCavan Potholesには途中からサックスまで混ざってきますしね。

 

演出が施され、技巧を競うかのような速さで

演奏される大衆受けの良い現代的な音楽。

片や飾り気のない地味だけど心に沁みる、より伝統的な音楽。

 

20年近く前によく聴いていた曲だけに、

今からするとどちらも昔の曲なんですが、

伝統と革新の違いってどんなものにでもあるよなあと、

アイルランドの音楽を聴き返す度に考えたりします。

 

どっちがいいとかじゃないんですよね。

どっちもいいんでしょうね、きっと。

 

守破離とも言いますが、

頑なに伝統を守り、受け継いでいく人もまた立派です。

どちらに肩入れするかで変わってくるってだけで。

 

昔ながらの伝統的イタリア料理を愛するオーナーと、

斬新な料理を次々生み出す若きシェフの対立みたいなものでしょうか。

 

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映画ディナーラッシュはオススメ☆

 

この対立がどうも最近の私の人生のテーマみたいになってまして。

ええ、まあ人生というかゲームのことなんですけどね。

結局語るのはゲームのことなんですけどね。

我ながら実に薄っぺらい人生ですが、そのことはまた改めて。

 

あ、最後にゲーム好き云々関係なく、

私の一番好きなアイリッシュ音楽奏者をご紹介します。

 

リズキャロルおばちゃんです。

まるで馬の嘶きのようにも聞こえる、

軽快なフィドルの音色が大好き。

初心者の人にも楽しみやすいと思うのですが、どうでしょう。

 


The Potato on the Door/Mary and the Tea Bag/Perpetual Check

 


The Didda/Fly And Dodger (Tunes)